2017年2月
北京での中医学関連組織表敬訪問(2015.9.23-25)報告
佐藤 弘
1)
、伊藤 隆
2)
、津谷喜一郎
3)
1)日本東洋医学会会長、2)同・常務理事、3) 同・渉外委員会担当理事
日本東洋医学会(Japan Society for Oriental Medicine: JSOM)は長年中国と交流をしてこな
かった。佐藤弘は日本東洋医学会会長に就任した機に、2名の理事とともに中国の中医学
関連組織との交流関係を築くことを目的として、2015年9月23-25日に北京へ表敬訪問
の機会を持った
1)
。
1. 中華中医薬学会(China Academy of Chinese Medicine: CACM)訪問
9 月24日午前に中華中医薬学会を訪問した。傷寒論シンポジウムが 1981年 10月 13
日、北京中医学院(現在、北京中医薬学大学)において行われたが、これは、CACM、
日本医師東洋医学会、日本漢方医学研究所との共催であった。また1984 年8月7-10日
に、第二次全国針灸鍼麻酔学術シンポジウムが北京で開催され、60カ国、800人の参加、
WHO西太平洋地域事務局長中島宏が参加している。参加者は日中の学術交流の可能性に
ついて議論した。
2. 世界中医薬学会連合会(World Federation of Chinese Medicine Societies: WFCMS)訪
問
9月24日午後、WFCMSを訪問した。WFCMSは2003年設立で、組織としては63カ
国、230の加盟団体を持つ。活動は、学術交流、人材養成、標準化、中医専門家派遣から
なる。資金は一部、中国科学協会(中国科協)から出ている。
24日の質疑の際、JSOMはWFCMSへの加盟を勧められた。我々は同会の方針、ガバ
ナンス、財政状態について十分な情報を得ていないので、加盟の決定をする意思のない
ことを説明した。WFCMS は国際中医薬試験の現状について紹介し、我々はいくつか質
問した。受験者が最も多い上位 2 カ国が日本と大韓民国であったことには驚いた。言う
までもないが、この試験に合格しても、日本での医師免許をもっていなければ、日本で
の医療は認められない。JSOM はこの試験に関連してどのような資格も与えるものでは
ない。
3.人民衛生出版社訪問
9月25日午前、人民衛生出版社を訪問した。人民衛生出版社は3部門からなる。すな
2
年に中医出版部として発足し、前衛生部の直系の組織であり、現在は国家衛生与計画生
育委員会と国家中医薬管理局の下にある。古典書、中西医結合、実際応用書など 200 種
以上の大学の教科書のみならず、中医関係では3,700種以上の書物を作成している。
25日の質疑の際、JSOM は中医学内の流派に関して質問した。同社は、より高いレベ
ルではいくつかのヴァリアントがあるが、卒前卒後の大学ではある程度同意の得られた
レベルで教えていると答えた。
4. WFCMSウェブサイトの記事に関して
我々の訪問に関する写真とコメントが2015年9月25日WFCMSウェブサイトに掲載
された
2)
。コメントには以下の文が含まれていた。
“提出加入中联的要求,并就国际考试等业务进行了沟通”
この文は、「JSOMからWFCMSに加盟したい旨申し出があり、参加者は国際中医学試
験に関する意見を交換した」と訳されるが、誤りである。
実際JSOMは何ら申し出をしなかった。また、JSOMは国際中医学試験を公的に認めたり
協力したりすることはない。しかしながら、この文はそうした重要な点を述べていない。
日本は、中国と同様、東洋医学を提供する重要な国の一つであることより、我々はWFCMS
ウェブサイトがJSOMがWFCMSとの友好関係を維持することを望んでいることを説明
するコメントを加えることを希望する。
1) Sato H, Ito T, Tsutani K. Pekin deno Chuigaku Kanren Soshiki Hyokei Homon
(2015.9.23-25) Hokoku (Report of courtesy visit to the relevant organizations in the field of Chinese medicine in Beijing 23-25 September 2015). Nihon Toyo Igakkai Kaiho・Senmon’i
Tsushin (日本東洋医学会 会報・専門医通信, The Society Report and Communication of
Kampo Medical Specialists of the Japan Society for Oriental Medicine (JSOM). October
2015:18-25.